「懲戒処分」とは、企業が従業員の秩序違反行為に対して課す制裁や罰則のことを指します。
したがって、企業が従業員の問題行動に対して正式に罰を与えることです。
主な目的としては、問題行動を起こしたその本人に成敗を加えることで企業秩序を維持すること、そして、従業員全員に対し、懲戒処分を受けた従業員の問題行動が好ましくない行為であることを明確に示すことで、企業秩序を維持するという二つの目的が挙げられます。
その本人のみにとどまらず、従業員全員に向けられたもでのあることを意識しておく必要があります。
懲戒処分の種類
懲戒処分には、各企業の就業規則で定められていますが、一般的に「戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇」の6種類が挙げられます。
戒告・譴責
戒告、譴責は、文書で指導する最も軽い制裁であり、従業員が引き起こした非違行為について反省を促す目的で行われるものです。
口頭注意のみや始末書を提出を求めるのが一般的とされています。
減給
また、従業員の給与を減額する「減給」があり、労働の対価である賃金の一部を差し引き、従業員の生活への影響を実感させて反省を促す意味合いを持っています。
回の減額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また総額が賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという法律があります。
1回の問題行動に対する減給で減給できるのは1回だけで、1年などの期間を定めて減給できるわけではありません。
出勤停止
従業員に一定期間、出勤を禁じ、その期間の給与を無給とする処分の「出勤停止」においては、減給よりも本人が受ける経済的制裁の程度が大きくなります。
会社の秩序を大きく乱す事案だと判断した時に選択される処分で、数日〜2週間程度の期間を想定する会社が多いです。
出勤停止期間中の賃金は支払わず、有給休暇の充当も許さないことから労働者の収入が大きく減少することになり、解雇よりも重いと感じる人が多いです。
出勤停止の期間については、法律上の上限はありませんが、通常は各企業内で就業規則で上限が決められています。
降格
そして、従業員の役職や資格を下位のものに引き下げる成敗として、「降格」が挙げられます。
管理職を解任したり職務の権限を狭めたりする処分で、出勤停止処分よりもさらに本人が受ける経済的な打撃は大きくなることが多いです。
降格すると、役職給などが下がることが通常で、その分給与が減ると同時に、役職給が下がった場合は元の役職に戻るまでの期間ずっと下がった給与が支給されることになります。
労働者のモチベーションにも影響を及ぼす処分です。
非違行為の時期と人事異動の時期が近接する際は、人事権の濫用だと主張されないよう降格の理由を明確にし、降格を決定するための客観的資料を十分揃えておく必要があります。
諭旨解雇・懲戒解雇
諭旨解雇、懲戒解雇では、問題行動を起こした従業員に対して退職届の提出を勧告して、退職届を提出しない場合は懲戒解雇するという処分です。
会社から即時追放しなければ秩序維持や事業の正常運営に重大な支障を及ぼすと判断したい際に選択されるものであり、懲戒処分としては最も重い制裁に相当します。
諭旨解雇または諭旨退職の場合に退職金が全額支払われるかどうかは会社の退職金規程によりますが、全額支払うとしている会社が多くなっています。
解雇予告手当を支払わず即時解雇する場合は、労働基準監督署による解雇予告除外認定を受ける必要があります。
因みに懲戒解雇と呼ばれるものは、企業に勤める一般の会社員に対してなされる処分で、懲戒免職と呼ばれるものは、公務員に対する処分ですが、現在の仕事を失うという点においては同じ意味として使われています。
各処分の妥当なケースについて
戒告、譴責の処分が妥当なケースは、1日の無断欠勤や業務上のミスについて、減給では遅刻や欠勤、業務上のミスについて、すでに戒告・譴責・訓戒などの処分が行われているにも関わらずさらに繰り返される場合に検討することが適切です。
出勤停止処分では、主に職場内の暴力や、重要な業務命令の拒否、職務の放棄にとって企業に損害を与えたケースに検討される場合が多いです。
降格処分では、管理職による社内の重要なルールに対する違反や、部下に対するセクハラやパワハラなどで処分を受けます。
諭旨解雇、懲戒解雇では、具体的には業務上の横領や着服、14日以上の無断欠勤、強制わいせつに該当するような重大なセクハラによるものが挙げられます。
懲戒処分は、従業員にとっては不利益を受けるものなので、トラブルになることは少なくありません。
しかし、問題行動を放置しておくと規律の緩い企業になってしまいます。
まとめ
制裁の重さや理由によっては、労働局や裁判所に処分無効を申し立てられる場合もあるので、就業規則に定めた基準以外では処分を行えません。
処分検討する際には労働者本人が弁明する機会を設けて妥当性を検討することが、懲戒処分を適正に執行する上で重要となります。
最終更新日 2025年5月15日 by ewbcjp